子供企画版 シャーロック・ホームズの冒険 第4話 『美しき自転車乗り』 THE SOLITARY CYCLIST まず、依頼人の淑女(レディー)の登場シーンなんですがね、「忙しいから帰ってもらえ」とか言っていたワトスン&ホームズは、彼女を一目見るとイタリア男並みにもてなし始めるのね。……いや、キモいからやめて欲しい。だってね、手とか握って、
前回の『海軍条約事件』で気になった点がありました。これを片付けておく必要があります。それはね、ある特定のシーンがカットされる場合の理由、これの3つ目です。僕は、NHKがカットする時に滅多矢鱈に切り飛ばしたとは考えません。その根拠は、シリーズを通してカットするライン(理由)が無いと統一感が無くなり、NHK版としておかしくなるだろうと思ったからです。 さて、そのカットの理由の3つ目ですが、それは"差別的表現"にまつわるシーンです。前回は<浮浪児が店頭で食べ物を盗ろうとしているところをホームズが杖で追い払うところ>だったんですが、前回の場合、この直後に推理に肝要な箇所があるためつながりをあえて切り、NHK得意の「こけおどし」をやらかしてんのかな、とも考えられたんです。 他のシーンにナレーションをかぶせてまでカットしたのは「貧乏」、それだけ。たしかに、
依頼人 「私……」 あなたの気高さや才能には合わんが」
ってのは、どこが紳士か! と思うくらいヒドい対応ですが、まあ、ダメですから。ホームズって。 イギリスは歴史的に階級社会ですけども、19世紀なんていったら旧態依然とした、そして厳然とした「階層」が色濃く残っていて社会の基盤にすらなっています。生活スタイルしかり、経済状況しかり。 そういった世相の中にホームズやワトスンもいます。紳士淑女が紳士淑女の中だけでもてはやされ、一方で経済的あるいは文化的下層階級がいるイギリス。僕はこのあたりの文化に詳しくありませんけども、紳士淑女という文化は、下層階級がいるからこその文化とさえ言えるのではないかと思いますね。 ということで、「当時の常識」は現在の常識に照らすと当然<差別的>に見えるわけですが、だからといってこれを抜いて考えてしまうと、非常におかしなことになってくる。たとえば、こういった「社会的背景」が薄いと、前回の『海軍条約事件』も実は説得力がありません。当時は、アフリカで展開された植民地競争(対フランス)や新興国ドイツといった次の時代に向けた動きが活発化していたわけで、切迫した政治的対立が背後にあるため、緊張感があるんです。
そんな、本筋からは果てしなく遠いことを考えつつ、事件の本筋には戻れないんで、今回のホームズ&ワトスンに戻したいんすけどもよろしいですか。
ホームズは冒頭から血色もよく、これまでのような皺のスーツとは好対照のビシッとした黒スーツ姿で、とにかくめちゃめちゃ健康になり、素晴らしい紳士ぶりを発揮します。これは意識的になされた演出でしょうね。途中、拳闘(古式ボクシング)まで見せてくれます。 ホームズ「君はとんだヘマをしたもんだね」 から始まる執拗ですっごい長いダメ出し(2分)をしたり、ワトスンのつぶやいた<愚痴>に嫌みなほど思いっきり反応したり。以上の場面は全て切られてますが、掛け合いが今まで以上にテンポがあります。ワトスンは鈍いんで、あんま傷ついてなさそうなのが救いですね。というか痛いですね。 (「駆け足」って言葉、久しぶりに聞いたな・・・)
また、ものすごい勢いで走ってくる馬車馬を指差し、 ただ、この一言で馬を止めてしまうワトスンも凄すぎると思います。 演出は「いかりや長介」とクレジットがありましたよ。嘘ですよ。 |
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