子供企画版 シャーロック・ホームズの冒険

第22話 『銀星号事件』
THE SILVER BLAZE

〜ホームズマラソン折り返し地点〜

 あのですね、前回気合い入れ過ぎたんでグダグダな感じで始めてみますけども(バランス重視の性格なもんでね)、グラナダ放送制作のホームズシリーズって全41作あるわけでね、そろそろ折り返したかな〜てなとこなんだよね。
 で……、「あと半分もあんのか」と。まったくもってウンザリはしてないんだけども、ちょっと「あるなぁ〜」と呆然としてますねハイ。
 ていうかね、かなり見慣れてきちゃっててね、ちょっとやそっとでは驚かないって言うか、いや、ただ観てるぶんにはすごい面白いんですが、「掘り下げないと」的な意識が強すぎて、書いても納得出来ないんすよね。じゃあ掘り下げればいいじゃん、てなことになるよね、うん知ってる。やってみる。僕やってみるよ、おねいちゃん!(おねいちゃん?)
 つーかですね(←まだあんのか)、見慣れるってのは恐ろしいもんで、特に演出方面を過度に意識してやってるともう、いろんなことがわかっちゃうんだよねぇ。前回っぽくいうと、直観が研がれているという感じなんですかね。意識下が分厚くなってますね。今回は相当に早い段階で事件の真相に辿り着いてしまって、正直自分で引きました。発見されて行く証拠が後から繋がってくみたいな? これって別に嬉しくない。だから今回は本線とか推理とかでの新しい発見、なかったすね。
 
 ただ、今回から、シリーズ的にかなり変化している部分があるんです。今日はそれをちょいとご紹介します。(愛川欽也調で)
 
 おまっとさんでした! 「銀星号事件」の広報部長、所長です! ……やっぱやめます。
 
 あの、以前も言ったかもしんないすけども、第2シリーズ、”RETURN OF THE SHARLOCK HOLMES” ではオープニングのバージョンが各回で違ってます。かなり凝ってる。変化している部分はそれだけではありません。まずホームズの髪型に劇的な変化が!!!!! 短いスポーツ刈りみたくなってる! あ、あり得ないよ。紳士が部活でもやんのかよ! と、無理矢理なテンションはおいときまして、冒頭にかなり長いカットシーンがあります。4、5分はカットされてますね。ここで、いきなりスポーツ刈りなのでありますが、珍しいことにホームズは自分のヘマを告白しています。「君(ワトスン)の記録にはないが私は意外に失敗が多い」と。
 久しぶりの感がありますが、NHK版のカットシーンの意図について考えてみると、やっぱりNHK版は(尺をあわせるためとはいえ)、ホームズの失敗や子供じみている所などに的を絞ってカットしていますね。妥当な推理を立ててみると、「失敗」は本線の事件に直接関係ないですからカットしても問題がないということでしょう。ただ、(NHKも知ってたでしょうけど)それらの「失敗」が作品として<無駄>だということでは決して無い。
 一般的に言えば、この「失敗」の必要性は、ホームズが超人的な能力を持ってるのは周知の事実ではあるものの、必ずしも彼が超人的な存在なのではなくて、極めて<近代的で合理的な人間>であるということを浮き彫りにするということに尽きるでしょう。
 もちろん、この「失敗」も凡人には理解出来ない時点で気付くため、周囲の者には意味不明でして、そこら辺がまた<超人>性を助長しかねないんですけども、観ている者は、「ホームズ=常人の理解が届かない凄い存在」としてではなくて、「ホームズ=頭が切れまくる人間」として観ていく軸をぶらしてはいけないと感じますね。

 ちなみに、冒頭で言われた「失敗」なんですけど、何が失敗なのかやっぱ全然わかんないすね…… orz

 さて、証拠の意義についてちょっと書いておきたいんですけれども、今回の事件ではかなり出来のいい部類の刑事が先に捜査をしてたんですが、本線に繋がりうる決定的証拠をいくつか見逃しているんです。で、ホームズは自分の推理が確立するにしたがってどんどん証拠を見つけて行くわけです。ただ、これは「ご都合主義」ではないと僕は見ますね。

ホームズ「有って当然と思ったね」

 ホームズには確信があって、それを証明するために証拠を探すわけです。証拠があって、それを繋げて行くというのも推理の一面ですが、それだと状況証拠に惑わされて真実を見失う危険性がある。ここで重要になるのは「想像力という資質」になります。

ホームズ「われわれは想像し、そして仮定を立て、その裏付けを得たのだ」

 前回、僕の持論の<有るべきものが無く、無いべきものが有る、そういった状況には人間が介在してる>ってのに軽く触れたんですが、この持論がつながっていくと思います。捜査するものが考えている<有るべき>とか<無いべき>というのは、想像力によって生み出される仮定ですよね。その真偽を証明するのが証拠の有無なわけです。
 これは現場の警部には欠けている信念として描かれています。証拠を次々に見つけるホームズを警部は不思議そうな顔で眺めます。
ワトスン「こんな物をどうして見逃したんだろう」
ホームズ「泥に埋まってしまっては無理だよ。検討をつけて探したからだ」
警部「は? 有ると思われたんで?」
ホームズ「有って当然と思ったね」

 警部は、ホームズの推理の一面、証拠の線分をすべて合理的につなげる推理をまねているに過ぎない。だから、ホームズのこの言葉に共感出来ず、不思議そうな顔をするんです。



 最初に言ったみたいに見慣れてくると、「ここ! これじゃね?」ってのがわかってくる。僕の場合は多分に演出の助けを借りてますけども、多様な推理過程がわかってしまってからホームズの態度や行動を見ていると、その気持ちがわかってくる。事件を解いている間中、核心を辿っていっているのが完璧にわかる。疲れますが、面白いっすね。

 ところで、この回ではホームズの髪型が短くなってるというのが最大の衝撃ではあるんですけども、ホームズ役のジェレミー・ブレットの顔色が相当に悪いんです。これは化粧ではなく、リアルに悪いと思いますね。クマがあるし。これは俳優ジェレミーの体調がかなり悪いということでもあるんですが、今回はシリーズ中のこと(つまり作品内の、ホ−ムズの体調)として考えておきます。次回にもつながることですし。


もくじに> <子供企画トップへ> <第24話>