子供企画版 シャーロック・ホームズの冒険
第23話 『悪魔の足』
THE DEVIL'S FOOT
〜オカルト以上〜
これまでも時折その「もやしっ子」ぶりを披露してきたシャーロックなわけですけども、今回はことのほか、それはもう、ものすごく病んでます。笑ってしまうほど病人です。
保養が必要なホームズは療養のために海の見える小高い丘にやってきてまして、一息ついたら腕にゴムを巻いてっ! コカイン打とうかな★
ってお前、療養の意味皆無じゃん!
オープニングからここまで、かなり長いですが当然のように全部カット。7分くらいほぼ丸々カットですね。ま、しょうがない。<紳士じゃない><本線と関係ない><みっともない>という三連コンボなので当然です。注射器もカット。微塵も出て来ないよ。
カットシーン中、さすがにワトスンは内心キレましてね、
ワトスン「海と同様に……死は常にわれわれと隣り合わせだ」
とたしなめます。NHK版では療養の理由について「不摂生のため医師に厳しくたしなめられたのである」とナレーションが入るのですが、その医師が他でもないワトスンだと解釈すると面白いすね。
ホームズは鋭い人なので、それがコカインのことだとすぐにわかります。
打ち終わってひとしきりたしなめられたホームズ、1人で砂浜歩ってるんですね。……ん? 立ち止まったぞ? ちょっと上向いた……。
試験管の液、捨てた?
ちゅ、注射器出たーー!
う、埋めたぁーーー!?
とまあそういうわけで、個人的にはちっとも感動しませんが、ホームズはついにコカイン希釈液を捨て、注射器を砂に埋めるんです。この後、シリーズで薬物を使用することは一切有りません。ホームズは友人によるアドバイスによって、薬物と決別することになるんです。
グッバイ! ヤク中ホームズ!
(若干残念)
さて、今回の『悪魔の足』ですがね、たぶんシリーズ中、抜群にオカルティックです。80年代バンドブームのヒット曲で喩えると"オカルティックが止まらない"といったところですね。全然わからないと思いますが、そう言ってごまかしでもしないと気持ち悪くて夢に出ます。代わりにCCBが出たりして。
今回は3名が犠牲になるんですけども、その状況がね、メチャクチャやばい! 映像化しちゃダメだと思う。まず、一点を見つめてずーっと揺れている者、次に泡を吹きながらフラフラしてる者、そして目をひん剥いて死んでる者。一晩で3名の気が触れ、錯乱状態で発見されるんです。被害者役の方達には申し訳ありませんが、正直言って熱演し過ぎです。
原作も含めた演出の特徴としてはですね、「牧師」が狂言回しとして出て来るってのが1つの要素と言えるでしょう。牧師が事件について宗教がらみの抽象的な解釈をすることによって不可解さや怖さを助長するのは、イコール「オカルト」とまでは言いませんけれども、そういう雰囲気を出すわけですね。被害の状況も、それが絞殺とか銃殺といったものではなく、かなり「悪魔的な」ものとして描写されているわけです。
しかし、重要なのは、「悪魔的な印象」でもなければ、その「演出方法」でもないと僕は思うんです。核心は、そういった演出が必要だった理由です。これらは何となく雰囲気で作られたものではない、ということです。
不可解で特異な事件に挑むホームズ(@ヤク切れ)の相手は「悪魔」ではありません。これはホームズの口から言われていることで、
ホームズ「人間業でないとすれば、私の手には負えませんな」
人知を超えた存在を相手には出来ない。ホームズが挑戦するのはあくまで人知。ここが今回、最も重要な点ですね。さらにここを僕なりに解釈すると、「悪魔なんて、不合理だ」と言っているように思えるんですね。
大英帝国のインドやアフリカなどへの進出といった世情がどれほど反映しているのかは僕は詳しく知りませんが、19世紀後半のヨーロッパでは「オカルト」が大きな影響力をもっていました。当時の有名な話としては、イギリスでノーベル賞を受賞した詩人、イェイツが秘密結社に入ってたりしますよね。
その時代、オカルト風味を入れるという意味合いではなく、オカルト的なものを示唆しつつ人知を相手にするということ、あくまで合理を追求すべきとする点、そこにホームズの意義があるように思うわけです。そういう意味でもオカルティックが止まらない理由はすごく深いと思いましたね。
しかし、この時代のヨーロッパというのは魅力的です。産業革命が完成し、科学が発見された時代。同時に、表裏をなすようにオカルティックな文化も花開いて行く。
『悪魔の足』は、それが書かれた背景に混沌とした西欧精神史が垣間見えました。
ここでホームズが薬物と決別するというのも、意味深すね。
〜〜〜
【追記】2006/5/17
ついに書きためていた原稿が底を尽きました。今後、書けたら随時UPしますが、DVDの返却期限が来週金曜日なので全編は書けなさそうです。
ただ、ここまで書いたのでいずれ完成させたいと考えています。
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