子供企画版 シャーロック・ホームズの冒険

第10話 『ノーウッドの建築業者』
THE NORWOOD BUILDER

〜推理とゲスト 後編〜


えっと、ノーウッド(木無し)なのに建築とはこれいかに、みたいなね!
むしろシャーウッドじゃないの? って、積水ハウスかよ!

 てことでね、毎回突っ走り過ぎている上に案外深い沼地なのでたぶん誰もついて来てないんですけども、いいの! 今注目されなくても、そのうちきっとノーベル(笑)とかもらえるから!

 い ら ね え け ど な

 うん。かなりツメツメで書いてるんですよね、最近(2006/2/11現在:巷ではトリノ開幕)。重ねて言いますがこのDVDは同僚から借りており、その同僚との同僚期限があと一ヶ月少々でございまして、残り、あと30話あるんですわ。1話あたり最低2回、多くて4回は観てるんで、激遅い。期限内に終わるんだろうか。無理だね。だけど頑張る、頑張っちゃうっちゃ!(ラム)
 で、そんなテンションの時に限って友人のMヒラくんから「麻雀やろう」とかいうふざけたメールが来てんので、ホームズっぽく断りたい昨今であります。

(2日後 orz)

 えっと……なんだっけ? こ、今回のゲスト…… あ、そうそう、シャーロックの兄、マイクロフトに続くゲストはね! このシリーズを通して不可欠なサブ・レギュラーに上り詰める、レストレード警部っすよ!! この人、かっこいいんだよね〜。エルキュール・ポアロのジャップ警部はかっこ悪いけどね〜。ジャップだね〜。レストレードはキリッとしてるし、頭脳そこそこ明晰。それでいて潔い男っぷり。スコットランドヤードの株は、幼心に高かった記憶がありまして(そしてジャップで貶められることになりますが)、かなり清潔感のある好敵手といったところです。

 さて、この事件は展開が一風変わっています。というのは、常にレストレード警部に先を越された上、ホームズの「予想」が常に裏切られていくんです。ホームズは珍しく弱気にさえなります。
 もちろんホームズは本腰を入れて調査に望むわけで、この手がかりの見つけ方がすごい。焼け跡をあさったり、草むらをかきわけたり、久しぶりの変装で重要な証言を聞き出したりします。ただ、見ているこっちには意味不明。いや、理解不能なことをしてるんじゃないすよ。意味不明なこと、です。「意味」は、他者においてはわかる者にしかわからないんです。

 前回の続きという前提で話を進めますが、ホームズは事実を推理し、事実により近い線、漸近線を再現しているはずなのですが、その漸近線さえも充分な説明がなされないため、見せられているのが漸近線上の線分になっているわけです。だから、<ホームズ漸近線の線分>を見ている人の大部分は、線分しか見えないので「何やってんの?こいつわ」的なミステリの魅力にはまっていきます。(ちなみにホームズが見ているのは<事実の線分>です。)
 この漸近線の線分を普通、読者(視聴者)は伏線と呼びます。言葉遣いとして正確でないと思いますね。あえて伏せられているわけではなく、伏せられているように見える線です。実際、改めて見直せば線分として現れている以上「伏線」とは言えないと思いますね。揚げ足ですが。

 さて、好漢レストレードが辿ってしまう偽の、ブラフの漸近線をホームズは「違う」と直観します。なぜ、決定的な証拠を否定してまで自分の見ている漸近線を肯定できるのか。ホームズは一言、「感覚で分かる」と言っています。決定的証拠に対する、脆弱すぎる理由、「感覚」は、推論とはほど遠いように考えられますよね。ホームズくらい"研ぎすまされた感覚"だったらわかるのか。結論から言うと僕は「そうだ」と思いますが、普通の意味での「感覚」とはちょっと違う。

 僕が思うに、感覚はその場その場で研ぎすませていても絶対に鋭敏にはなりませんね。ホームズの感覚のレベルは、依頼人が訪れた時からその依頼人の言っていることの整合性なり信憑性なりを洞察し、あるいは前回述べたような方法で人物を解剖しつくし、ベイカー街を訪れた経緯を全て推理し、完全に信用出来るところを事実として確定出来る、そういったものを含んだ感覚です。視覚・聴覚レベルに限らず、そういった感覚があらかじめあって物事を認識する。だから、不自然な事柄や挙動が浮いて見えると、そう僕は思います。言うまでもなく、これらの要素は前提であって、これが多様な現象の中にある場合に働くわけですよね。前提であるということはことさら意識化されませんから、第6感と言われるかもしれない。Six Senceは、ホームズ世界的に言えば、(神秘的に見えるが)前提を忘れた鋭敏な感覚と言えるでしょう。

 僕はこの"The Norwood Builder"を5回見ましたけれども、「事実」と「ホームズ漸近線」と「ブラフ漸近線」がわかった上でホームズの「何やってんの?」的な行動を見ると、それは彼自身が確証を得るための行動であって、非常に合理的になされていたことに気付かされました。

 ホームズはこの回でレストレードに手柄を渡した上で「仕事自体が報酬」だと言います。それは、かっこつけでもなんでもなく、ホームズが自分の漸近線を証明出来た証、自らのアイデンティティーを確立できた証だからではないかと。それ以上の報酬は、確かに無いですね。
 
 ということで、どんな書き出しでもどんどん原稿のハードルが上がっていきます。(T_T)


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