子供企画版 シャーロック・ホームズの冒険
第13話 『最後の事件』
THE FINAL PROBLEM
〜グラナダ版の「意図」を解きほぐそう〜
今回のオープニング、わかる人にはわかりすぎる「例の曲」なんですけども、他の回と違ってかなり重々しい雰囲気になっています。これ、別バージョンを録音し直してるんですよね。"最後の事件"にふさわしい気の持たせようです。で、いきなりのアクションの後、ベイカー街が映るんですが、この道、美しい白い道路になっています。実はノーウッド辺り(第10話)からベイカー街は舗装工事が始まっていて、赤毛(第12話)なんかでも工事の様子が映っていたんです。
えっとですね、いきなりですがネタバレなんで、ちょっとだけ色替えです。
原作の話を少しさせてもらうと、度重なるホームズの妨害に激怒した悪の親玉モリアーティーとシャーロックが相打ちになる話です。ドイルはこの話で「ホームズ」に決着をつけようとするんですが、読者からのものすごい不満と要望で再び筆を執ることになるんです。
NHK版では前半のヨーロッパの部分が相当カットされています。つまり、この回の中でホームズが解決した事件と呼べる部分はかなり端折られることになるわけね。他の回でも、後半を切ってしまうとワケがわかんないですから前半をカットしてナレーションで説明しとく、てのは常套手段ではあるんですが、それにしても今回は切りまくる。あまり言いませんがそれだけ、後半が緊迫した場面の連続だということです。
この回は、推理という観点からはかなり掘り下げにくい回になっています。ヨーロッパを又にかけた大冒険で、明らかに決闘が、アクションが見所なんですね。アクションをクローズアップして書いても面白くないと思ったんでどうしたもんかと思ってたんですけれども、他の回ではなかなか書けないことを書いてみます。テレビシリーズとしての、連続ドラマ的な演出についてです。
さて、グラナダ版"THE ADVENTURES OF SHERLOCK HOLMES"は、原作に照らすと次のようになっています。以下、数字はグラナダの放映順で、数字の順序は実際に事件が起こった年代順です。
◆長編:26(バスカヴィル家の犬)、21(四つの署名)。
◆「シャーロックホームズの冒険」から
<6、35、1、19、12、7、8、28>
◆「シャーロックホームズの思い出」から
<17、11、9、3、(39)、5、22、13>
◆「シャーロックホームズの帰還」から
<16、37、14、40、4、10、18、2、34、20、15>
◆「シャーロックホームズの事件簿」から
<33、29、30、31、36、32、41>
◆「最後の挨拶」から
<(39)、25、24、23、27、38>
(参考サイト)
ごちゃごちゃです。ついでに以下に欠番を挙げておくと、
長編「緋色の研究」・長編「恐怖の谷」・「五つのオレンジの種」(冒険)・「花婿失踪事件」(冒険)・「黄色い顔」(思い出)・「技師の親指」(冒険)・「緑柱石の宝冠」(冒険)・「三人の学生」(帰還)・「ブラック・ピーター」(帰還)・覆面の下宿人(事件簿)・「スリークオーターの失踪」(帰還)・「アベイ農場」(帰還)・「退職した絵の具屋」(事件簿)・「三人ガリデブ」(事件簿)・「白面の騎士」(事件簿)・「ライオンのたてがみ」(事件簿)・「最後の挨拶」(挨拶)
です。
さて、このサイトに詳しいのですが、この後のグラナダ版は人気と共に拡大枠で番組を作ったり、数話限定で独自の脚色をしたりしていくことになるんです。ただ、この第13話まで(後に「第1シリーズ」と呼ばれる事になります)は、シリーズ独自の事件の配列やこれまで見てきた内容によって、ホームズの姿をより活かしてみせられるように工夫されてると思うんです。つまり、グラナダの演出を見て取ることが可能です。
というのもですね、ヤク中で廃人ぽかった性格破綻者が事件という壁を一話ごとに乗り越え、名高い探偵になる姿がこの「最後の事件」で頂点を迎えているんですよ。細部についても、たとえば今回のベイカー街の道路の整備なんかは一連のストーリーとして「繋がるように」工夫されていると僕は見ます。"オレタチ(:グラナダ)、演出してるんだぜよ☆"ってメッセージが見えるんですよね。
たしかに、グラナダ版の基本コンセプトは徹底した時代考証と作品分析によって決定版のホームズを撮ることだったでしょう。ただ、ドイルが発表した順序では解決された時代がバラバラの事件を並べることになり、興をそがれる。それに想い出や体験記が入り交じったワトスンの描写をシリーズとして脚本化することは、非常に難しかったはずです。
で、そんなこんなでシリーズを通して見せる工夫を凝らしつつ、ホームズの魅力を演出して言ったんだと思いますね。
この"最後の"事件、ラストにワトスンの涙の挨拶があります。お疲れさま、ワトスン。よくがんばったね、グラナダ。
って
うわーーーーーーーーー
ラストショットが注射器かよ!!!!
第 2 シ リ ー ズ、
だ い じ ょ う ぶ で す か ?
【追記】
忘れるので一応書いておきますが、今回でワトスン役だったデビッド・バークが降板します。そしてアフレコの長門裕之も。次回からはエドワード・ハードウィック(福田豊士)に変わります。てことで、本当にさようならお茶目なワトスン。バークにとって最後の事件なのでした。(T_T)
【追記2】
あと、モリアーティー(エリック・ポーター)のアフレコ(南原宏治)ですが、「ヒ」と「シ」の区別がついておらず、この一点だけ、ひじょーに気になります。
モリアーティー「このさくしん(作品)はお売りできません」
江戸っ子かよ!!
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