子供企画版 シャーロック・ホームズの冒険 第17話 『マスグレーブ家の儀式書』 〜ザ・ホームズ〜
線にいる者の心の機微というのは日々アップダウンを繰り返すものなんでしょう。 前回に至るまで、ホームズはワトスンの仕事(事件の記録)によって、かなり多くの人に知 られ私立探偵の格として頂点を極めます。でもですね、その結果待っているのは「栄光の日々」 ではありません。登場シーンはカットされてるんですが、毛布に包まりつつ馬車に揺られ、旧 友の文句を言いながら咳き込んでます。ワトスンに会う前の初期事件(原作でも事件名の提示 だけ)の資料をほのめかしつつ見せなかったりね。 "頂点"が何やってんすか!!
と聞かれればダメですよ。執事のベッドで寝るし。
いうのは、原作『シャーロックホームズの思い出』中の"THE MUSGRAVE RITUAL"の位置づ</p> け(ホームズによって解決された時期)は、実は最初期に当たるんです。つまりホームズが かなり若い頃の話なわけ。 だからこの原作に通りに考えた場合、しがない一探偵時代、日常に飽きており仕事もそれほ ど刺激にならなかったのだ、それで薬物に逃避、と解釈する事が出来る。グラナダシリーズは 「原作に忠実」が基本コンセプトなんでね、その通り作ったと考えられるし、僕はこれが妥当 だろうなと考えています。 一方で、あえて、このシリーズを通して考えた場合、今回の薬物の一件はあまりに も唐突すぎる。前回まで仕事は極めて順調、週末に療養ついでに田舎に休暇に出て過去の資料 の整理。そして……コカイン? 不自然ですよね。ここから考えられる事は、不自然なのにど うして描写したのかということです。もちろん、コカイン・ベースで話を並べてるわけではな いだろうから、薬物を軸に考えてること自体がズレてるっちゃズレてるかもしんないけどね。 ♂釈の方向としてどちらが妥当か、ということは僕はあまり考えてないです。どっちが妥当 かはグラナダの制作者に聞けば一発で分かることですし、作意の真相を知りたいわけではな い。どうだったかではなく、どう見えるかということで展開する方が面白いと思うんです。情報から生まれる自分の限界ですからね。ま、「どっちが妥当か」と いえば前者でしょうねぇ。 ちょっと飛躍しますけども、そういう意味では、いわゆるアカデミックな「文学」って裏を 取りますけれども、正直そのレベルになると面白いと思えないんすよね。トリビアっぽい…… というか、個人的には単に面倒なだけですが……。研究者には向かないタイプすね。
さて、解釈の方向についてはちょっと措いて、この「マスグレーブ家の儀式書」の見所は <宝探し>なんすよ。とても古典的というか、スタンダードな宝探し。グラナダシリーズがこ こでこれを入れてるというのは、目先を変えるということなんだろうと思いますね。大きな事 件が2つ続きましたから、ここいらでガリガリの推理というより軽めの推理で、ということだっ たのではないでしょうか。で、その原作に忠実に作ると上のような事情でコカインが出て来る んで、その通りに作ったというのが、僕に見える、本線と呼べる制作の経緯 です。
ただ、これだけだと若干もの足りないので、シリーズとしての必然性を考えてみようと思い ます。偶然の産物はあるのかってとこ。 らアドバイスを求められるんですけども事件ありきではない。賢明な読者諸氏にはもうおわか りかと思いますが(ワトスン調で)、ホームズにはこのとき頭脳を埋めるべき推理が無いんで すね。全く退屈な日常。資料整理とかやる週末。いくつかの巨大事件を解決しているようでい て、そのような大きな事件は限られていて、他の日々はありふれている。
僕自身の論法としてはかなりマンネリ化している感がありますけれども、この日常は踏まえ ておく必要があります。宝探しの謎を解いた後の推理で、ホームズは彼流の推理に没頭します。 僕は「シャーロック・トランス」と呼んでるんですけどね、今回はそれがハッキリ説明されて います。 ような状況の下でいかに行動するか、それを想像してみるんだ。」 ると思えるんです。したがって、<ウキウキする宝探し>が物足りなくて薬物に行くのではな く、そもそも「事件でない」んじゃないでしょうかね。彼にとって、この回は。 僕、この話を覚えてはいなかったんですけれども(筋は有名)、このシャーロック・トラン スは非常によく覚えていました。 実はこのシリーズで、自分の性格と照らして個人的に影響を受けてるんじゃないだろうか、 と思えるとこが多いんです。見てたの小学校から中学という子供時代ですからね。単なる憧れ というより心酔だったのかもしれない。たとえば紳士なとこですかねー。あと正義を重んじた り。あ、それから女性が苦手なとこや、逃避するとこ。タバコを愛飲しているt ダメじゃないか!! 何やってんすかオレ!
そうだよ、退屈なんだよ。 |
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